東北学院大学

法学部 法律学科

学科長あいさつ

法律学科長 遠藤 隆幸

今日1日の出来事を振り返ってみましょう。あなたは今日、何を見、何を体験し、どんな行動をしましたか。

朝、スマホのアラームより先に起きて、少しいい気分。まずサブスクリプション・サービスでお気に入りのバンドの曲を数曲聞き、気合を入れて身支度をしよう。朝食は昨日コンビニで買ったおにぎりで軽く済ませ、アパートを出る。途中で友達とばったり会い、そのまま最近オープンしたカフェへ(ということが困難な時代になってしまいました。はやく気軽にこういったことができるようになるといいですね)。支払い。あ、ここはスマホ決済ができるみたい。先日入れた〇〇payを使ってみよう。ポイント貯まるみたいだし。救急車が向かってくるな。青信号だけど止まって先に行かせてあげなきゃ。家に戻ってテレビを見たら、海外で起こった空爆のニュース。なぜこんな国際紛争が起こってるんだろう。ネットで同性婚の論評を読む。同性婚が認められるとどんな社会になるのかなと、ちょっと将来のことを考えたら明るい気持ちになった。もう遅い時間。「〇〇を歌ってみた」の動画を見て、そろそろ寝よう。

ごくごく普通の日常の一場面です。しかしこのような「あたりまえ」の日常は、自然にわたしたちが享受できるものではありません。社会の中であたりまえにわたしたちの尊厳や安全が守られ、社会秩序が維持されるための制度的基盤として、法は存在します。だからこそ、ときに安定した日常が破られ、紛争が生じるときには、その解決方法として法が用いられるのです。このような社会のインフラとしての「法」の仕組みを学び、それをよりよく運用していく方法論が「法学」です。

では、先ほど示したある人の一日を法のフィルターを通して見てみましょう。サブスクの音源を私的利用以外に用いることはできるのだろうか。できないのなら、それはなぜだろうか。スマホ決済では誰が、誰に対して、どのような支払いをしているのだろうか。決済中に突然「マネー」が消滅したら、その責任は誰がどのようにとるのだろうか。救急車を優先させる法的根拠は。国際紛争を抑止する国際機関はあるのだろうか。婚姻をすると二人にどんな権利や責任が生じるのだろうか。「歌ってみた」の著作権処理はどのようになっているのか。などなど、様々な法的仕掛けが見えてきます。

法学を学ぶと、こういった日常に潜む仕掛けがよく見えるようになります。それにより得た知識や思考法は、わたしたちがコミュニティー、地域、社会、国家など、様々な場において何らかの仕組みを作る必要に迫られるとき、そしてその仕組みをよりよく改善しようとするとき、大いに役に立ちます。法学は裁判官や弁護士になるために六法全書をただひたすら暗記するといった、一部のエリートのための、無味乾燥な学問ではないのです。

われわれ法律学科の教員は、個々の持ち場で、よりよい仕組みを作るべく、また今ある仕組みをさらに改善すべく、研究に励んでいます。そして、その過程で得ることのできる学びの喜びを、みなさんと共有できることを願っています。

わたしたちと一緒に法学を学び、これからの社会の仕組みを構想してみませんか。