法学研究科では、平成26年度から、博士課程前期課程を「法学研究コース」、「法学専修(論文)コース」、「法学専修(一般)コース」の3コースに分け、コースによって修了要件を異なるものとしました。課程修了のために書く論文についても、法学研究コースと法学専修(論文)コースは「修士論文」を書き、法学専修(一般)コースは「リサーチペーパー」を書くことになりました。では、修士論文とリサーチペーパーはどこが異なるのでしょうか?
その前に、両者の共通性を確認しておきます。修士論文もリサーチペーパーも研究論文であることに変わりはなく、広い意味ではどちらも修士論文です。ですから、章立て・註の表記など、当該分野で研究論文として通用する形式・作法を守っていることが求められます。また、分量についても差はありません。あくまで原則ですが、おおむね30000字以上になることが期待されています。
さて、両者の相違ですが、まず、取り上げるテーマが異なります。修士論文では、当該学術分野において検討する意味があると思われるテーマでなければなりません。学術的価値が重視されます。それに対して、リサーチペーパーでは、そうしたテーマだけでなく、実践的・実務的に価値のあるテーマを取り上げてもよいことにしています。
第二に、論文で示される結論について異なります。修士論文では、当該学術分野において学術的に価値のある結論を提示していることが求められます。それに対して、リサーチペーパーでは、学術的または実践的・実務的に価値のある結論が明確に提示されなくとも、模索されていればよいことにしました。
第三に、論文で示される論証について異なります。修士論文では、結論を導出するにあたって、先行研究・判例・文献等の資料が適切に紹介され、検討されているなど、適切かつ十分な論証が行われていることが求められます。それに対して、リサーチペーパーでは、選択したテーマについて結論の導出を模索するために、十分な関係のある資料・実例について、独自の調査または検討を行うことが求められます。
くりかえしになりますが、修士論文もリサーチペーパーも広い意味では修士論文として扱われる研究論文です。前者には学術研究としての性格、結論と論証における高いレベルが求められるのに対して、後者には実践・実務研究としての性格をもつものも含まれ、結論と論証では研究論文としての一定の水準に達していることが求められるということです。